2010年8月3日火曜日

2010年8月2日衆議院予算委員会

【予算委論戦】菅首相、予算編成で野党意見も反映 谷垣氏が協力約束



衆院予算委員会は2日、菅直人首相と全閣僚が出席して 基本的質疑を行い、菅内閣発足後初の本格論戦が始まった。衆参ねじれを受け、首相は野党に「国民に必要な政策が 実行できる合意を得る場になるよう臨んでほしい」と協力を要請。平成23年度の予算編成についても「場合によって野党の意見も入れな がら実現したい」と述べた。

消費税を含む税制抜本改革では、超党派の協議機関設置に重ねて意欲 を表明。「(税制改革案の)結論を出す期限を切ることは改めたい」と述べ、22年度中の策定方針を撤回した。その上で「大きな税制改正を行う時は国民に判 断を頂く必要がある」と述べ、税制改正前に衆院解散する考えを改めて示した。

米軍普天間飛行場(沖縄県宜(ぎ)野(の)湾(わん)市)移設では「沖縄 の理解を得ることを含めさらにプロセスが必要になる」と述べ、決着を11月28日の沖縄県知事選後に先送りする考えを示した。

一方、自民党の谷垣禎一総裁は税財政改革や国会同意人事では「真(しん)摯(し)な提案があれば 真摯に受け止める」と協力を約束。これを受け、首相は首相官邸で記者団に「谷垣総裁とは建設的な議論ができるのではないか」と期待感を示した。


【予算委論戦】精彩欠く首相、野党の攻勢にタジタジ 涙目になる場面も


菅直人首相にとって就任後初めての本格論戦の場となった2日の衆院予算委員会。衆参ねじれとなり、首相はひたすら低姿勢を続けたが、自民党から米軍普天間飛行場移設問題や「政治とカネ」問題などを攻め たてられ、涙目になる場面も。その精彩を欠いた姿に「政界きっての論客」と言われた野党時代の面影はない。(榊原智)

「民主党の衆院選マ ニフェストは履行不能だ。首相は(通常国会の)代表質問で『参院選で信を問う』と言った。マニフェス トの欺(ぎ)瞞(まん)を解消する手だてはただ一つ。解散総選挙だ!」

自民党の谷垣禎一総裁がこう迫ると、首相は「マニフェストの7 割方は進んでいる」と釈明した。参院選大敗でも続投する理由も「昨年の政権交代への国民の皆さんの期待」をあげただけで政権の旗印を示すことはできなかった。

谷垣氏は「首相は消費税について参院選で言ったのに9月の民主党代表選では言わない。言葉が軽いのではないか」となお攻勢を続けた。 首相は「財政再建では一歩も引くつもりはない」と強弁しながらも「党で議論をお願いしており、代表選で具体的な数字を言うのは控える」と就任当時の意気込 みは影を潜めた。

続く自民党の石破茂政調会長も容赦なかった。

石破氏は普天間問題を微に入り細に入り追及した。文民統制(シビリアンコントロール)が有効に成立する条件を質(ただ)されると首相は思わずこう漏らした。

「口頭試問を受けている感じもしますが…」

石破氏が普天間問題で幹部自衛官の意見を直接聞くよう求めると、首相は「機会をできるだけ早く設けたい」と応諾した。

「首相が沖縄に出向き、今までをわび、罵(ば)倒(とう)されてもこれをやるんだと言う以外ない。最高責任者が逃げれば極東の平和と安定を脅かす」

石破氏がこうたたみ込むと、首相は顔をこわばらせ、目はうっすらと涙を浮かべたが、沖縄入りには「効果的であるならば、何度も足を運ぶ用意はある」と述べただけだった。

「政治とカネ」問題でも散々だった。自民党の柴山昌彦衆院議員は小沢一郎民主党前幹事長の証人喚問実現に向け、指導力を発揮するよう求めたが、首相は「委員会または国会の関係者で議論いただければ…」と人ごとのよう。側近である荒井聡国家戦略相の事務所問題も「専門家の調査も含めてきちんと処理したということなのでそれでよい」とかばった。疑惑追及の急先(せん)鋒(ぽう)だった「クリーン菅」の見る影もない。

場外からも矢が放たれた。首相が「衆院80、参院40程度」の議員定数削減を表明したことを受け、西岡武夫参院議長は2日の記者会見で「行政の長が具体的な削減人数まで出すとは極めて不見識だ。参院が首相の指示を受けることは一切ない」と非難した。

ねじれ国会は初論戦であろうと首相に容赦はない。首相は参院選敗北の重みを肌で感じたに違いない。

首相,初論戦 財政再建 丸投げ

「消費税増税,態度見えぬ」野党反発


菅直人首相就任後初となる2日の衆院予算委員会で,首相は消費税率引き上げについて,超党派協議を呼びかけたほか,平成23年度予算編成で野党への配慮を表明した.ただ参院選の敗因と批判を浴びた消費税増税について大きく姿勢を後退させ,優先課題に掲げる財政再建の軸足は定まらず,【丸投げ】が実情だ.野党も反発を強めており,協力を取り付けるどころではない.

「党を超えて議論する場を検討する」「党の方で議論をいただきたい」

菅首相は,消費税増税をめぐる超党派協議に加え,参院選前に意欲満々だった今年度中の税制改革案の取りまとめも撤回し,党の議論に委ねた.

さらに民主党内から参院選での敗因と批判を浴びた消費税増税をめぐる発言についても「唐突だった」と改めて陳謝.

9月の党代表戦を控え,身内にすら気を使わざるを得ない苦しい立場を露呈した.

一方で菅首相は「経済,財政,社会保障の3つの改革を実現する」と強調.医療や介護などの成長分野に予算を重点配分し,経済成長を実現する「第三の道」の持論もぶった.

だが,社会保障制度の改革に加え,成長分野に配分する財源の捻出にも不可欠な消費税増税に踏み込めない状況では,説得力はない.

腰の定まらぬ菅首相に対し,野党側は「態度がはっきり見えてこない」(谷垣禎一自民党総裁)と反発を強めるばかりだ.

参院選での公約で消費税率の10%引き上げを掲げた谷垣総裁は,先の通常国会で廃案となった自民党提出の「財政健全化責任法案」を空きの臨時国会に再提出することを表明.

これに対し,菅首相は「重要な提案であり,法案が提出された場合は前向きに検討できるようにしたい」とすり寄った.

野党は,窮地に立つ首相の立場を見透かしている.しかも,増税への「毅然とした態度」(自民党の石破政調会長)を示せず,自民党への税率への【抱き付き戦略】を繰り返すかのような首相に協力するような党はどこにもない.

【予算委論戦】どこまで「ブレ菅」? 国家戦略、参政権…


ようやく実現した菅直人政権初の衆院予算委員会。2日、質問に立った自民党の谷垣禎一総裁は「何を議論していいのか分からない」と愚痴をこぼし、石破茂政調会長は「誰を相手に話をしたらいいのか」とぼやく。国家戦略局構想、永住外国人地方参政権-など国の根幹を決める重要課題でひたすらブレ続ける菅政権は輪郭さえもぼやけてきた。(阿比留瑠比)

■あきらめたはずが…


昨年の衆院選でマニフェスト(政権公約)の「5原則5策」の一つに掲げた政治主導実現の柱となる国家戦略局構想が再び注目を集めている。衆参ねじれにより、構想の前提となる関連法案の成立が困難になったことを受け、首相は構想をいったんあきらめ、「シンクタンク機能」への衣替えを指示していた。

ところが、みんなの党が賛同をちらつかせると、がぜんやる気になったようだ。首相は2日の予算委で「政治主導のより重要な役割を戦略室にお願いする」と強調。仙谷由人官房長官も2日の記者会見で「前国会に提出した法案をお願いできたら」と法案成立に期待感を示した。

だが、戦略局構想で具体的にどう進め、どのような政治主導を確立していくか、ビジョンははっきりしない。場当たり的な首相の対応ばかりが目立った。

■参政権もふらふら 


永住外国人への地方参政権付与問題では、推進派は従来、平成7年の最高裁判決が判例拘束力のない「傍論」部分で「(付与は)憲法上禁止されていない」としたのを論拠としてきた。

ところが、鳩山内閣は末期の6月4日の閣議で、それまでの政府答弁を事実上修正。「傍論」部分を省き、「地方首長、議員を選ぶ『住民』とは日本国民を意味する」などと判断した本論だけを引用し、「政府も同様に考えている」とする答弁書を決定した。首相も副総理・財務相として署名しており、参政権付与は無理があるとする政府見解を認めたといえる。

ところが、首相は6月15日の参院本会議で「外国人参政権実現に努力してきた姿勢に変更はない」と語り、なお参政権付与に含みを持たせた。2日の衆院予算委でも松原仁氏(民主)が政府見解をただしたが、首相は答弁しなかった。

【主張】菅首相 腰引けて日本を担えるか


菅直人首相が就任以来、初の予算委員会審議に臨んだ。日本をどうするのかを明確に語ってもらいたかったが、参院選で大敗した釈明の範囲にとどまっている印象が否めない。

内政外交の懸案解決に腰が引けているようにみえる。それでどうして日本丸を担えるのか。

とりわけ問題なのは、消費税増税について、平成22年度中に改革案をとりまとめるとの方針を自ら撤回しようとしていることだ。

首相はこの日、「消費税自体が否定されたのではなく、取り上げ方がまずかった。その面も反省している」などと改めて釈明した。今後の消費税への対応については、民主党内での議論が必要なことや、低所得者対策など多くの課題があることを挙げ、「いつまでにと期限を切ることは改めたい」と述べた。首相は先月30日の国会召集日の記者会見でも「代表選で約束にすることは考えていない」と、消費税の争点化は避けたい考えを示している。

参院選に際し、首相は自民党が掲げた「10%」を参考にし、与野党協議を呼びかけ、今年度中の改革案とりまとめを提起した。予算委では「財政再建はだれが首相でも、だれが政権を担当しても避けられない」と改めて与野党協議を呼びかけ、予算編成に野党の意見を反映させる意向も示した。

だが、民主党内の強い反発を受け、消費税について首相はまたもぶれている。これでは野党側も協議に乗れないだろう。消費税増税の必要性を認めながら具体的な論議は避けようとする姿勢はわかりにくい。引き続き政権を担いたいのなら、懸案解決の処方箋(せん)を示すしかあるまい。

首相への提言機関に格下げされた「国家戦略室」の扱いでも混乱がある。枝野幸男幹事長が一転して「局」への格上げを目指す姿勢を示し、首相も「格下げとは全く違う」と釈明した。だが、首相は「予算編成そのものをやるなら、主計局350人の部隊を官邸に持ってくることになる。そこまでは考えていない」と、戦略局を予算編成の司令塔とする当初構想に否定的だ。このことも昨夏の総選挙で約束したのではないか。

予算委では与党議員からも「どういう国家像を目指すのか」と質問された。首相の発言が同僚議員の心からも離れているとしかいいようがない。

衆院予算委 主な首相答弁

消費税


参院選で消費税に触れたことが大変唐突に受け止められ申し訳なかった.いつまでに結論を出すという期限を示すことは改めたい.ただ,財政再建については一歩も引くつもりはない.社会保障と消費税は一体で議論したい.(税制抜本改革を)党を超えて議論する場について何らかの合意形成ができるなら,検討して欲しいと(玄葉光一郎)政調会長にお願いしている.

自民党の財政健全化法案


法案が出れば真摯に受け止め前向きに検討するように内閣,党に指示したい.

予算編成


衆院マニフェスト(政権公約)の「国民の生活が第一」という考え方と,参院選での「元気な日本を復活させる」という2つの考え方を柱に(平成23年度の)予算編成にあたりたい.与党,場合によっては野党の入れて実現したい.予算編成の中で経済,財政,社会保障の3改革を実現し,雇用拡大を通して経済成長を図りデフレから脱却する.

国会議員の定数削減


まず国会議員が自ら身を切る姿勢の中で,できるだけ年内には実現できるテンポで議論を進めて欲しい.

解散・総選挙


この形で政権運営した上で,しかるべき時に解散なり総選挙で政権選択してもらう.いつまでに解散うんぬんということは考えていない.大きな財政改革を行なうときには国民に判断をいただくことが必要だろう.その考えに変わりない.

国家戦略室


「格下げ」という一部報道があるが,これは逆だ.首相直属というのがポイントだ.(政策)判断の時に政策を提言してくれる位置づけにする.役所は自分のやりたいことを伝えるが,都合の悪い話は上がってこない.首相が考えることに,必要だということを伝えるのが政治主導だ.

普天間移設問題


日米合意をしっかりと実行に移していくのは菅内閣の意志だ.沖縄の負担軽減についても大きく努力する.沖縄に足を運ぶ用意は十分にある.(移設計画決定時期は)沖縄の理解を得ることを含めて,いくつかのプロセスがさらに必要となる.(8月末までの工法に関する検討完了について)決めたことを即,工事という形で実行に移すわけではない.自衛隊幹部から沖縄のことについて話を聞く機会はまだ設けていない.できるだけ早い段階で設けたい.

米海兵隊


北朝鮮をめぐる状況は過去の時代以上に厳しい.米海兵隊が沖縄に基地を含めて存在することは,今の日本の安全にとって必要であるばかりでなく,アジア地域の安定にとっても必要な存在だ.その存在は安全保障にとって抑止的効果を上げている.

文民統制とは


基本的には国民が軍事についても最終的に判断する.しかし現実の社会では,軍事組織に属さない政治家が民主的な手続きの中で判断するのが文民統制と考える.

拉致問題


金賢姫(キム・ヒョンヒ)元死刑囚を招いたことはいろいろ議論があるが,被害者家族にとっても情報を集める上でも大変大きな意味があった.一刻も早い被害者の帰国を実現するために,政府としてやれることは何でもやる覚悟だ.

朝鮮半島有事


朝鮮半島の場合,人数も含めて,より大きな事態となると思うので,民間の飛行機,船などの手配を含め全力を挙げて対応しなければならない.

ねじれ国会


与党として丁寧な議論が必要だ.野党にも,国民に必要な政策を実現できるような形で臨んでほしい.

千葉景子法相続投


法相として適任な方だと思ったので,議席は失われたが,憲法的には民間人が大臣を務めることがしばしばあるので,大臣としての職務を遂行してほしいとお願いした.

小沢一郎前幹事長らの証人喚問


委員会または国会の関係者の中で議論をいただければと思っている.

荒井聡国家戦略担当相の事務所費問題


荒井氏は専門家の調査も含めてきちんと処理をしたということなのでそれでよいと思う.

-----2010年8月3日産経新聞より引用

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